戦略日記
適材適所で強い組織をつくる #271
組織論で「適材適所」という言葉は、昔から当たり前のように語られてきました。人を活かす経営の重要性は繰り返し確認されてきたテーマだと思います。
一方で、中小企業の現場を見渡すと、その運用が少し苦しくなっているケースも少なくありません。「できないところを直そう」「弱点を克服しよう」と、良かれと思って自己啓発型の指導に力が入りすぎてしまう。結果として、不得意な業務を平均点まで引き上げることに、多くの時間とエネルギーが使われていきます。
もちろん人の成長を願う姿勢は大切です。しかし経営の視点で見たとき、それが必ずしも成果に結びついているとは限りません。
孫子の兵法に「勝ち易きに勝つ」という言葉があります。これは努力を否定する考え方ではなく、勝てる条件を整えた上で勝負するという合理的な姿勢を示しています。戦略経営の視点に立てば、組織づくりも同じだと言えます。
弱点を均等に補うよりも、強みをさらに伸ばす。人材育成も、配置も、評価も、まずは「その人が最も力を発揮できる分野」を軸に考える。それが結果として、組織全体の力を高めていきます。
営業が得意な社員には、営業の役割で力を発揮してもらう。段取りや管理が得意な社員には、現場を支える役割を担ってもらう。職人肌の社員には、無理に別の能力を求めるのではなく、技術の深さと安定性を磨いてもらう。それぞれの強みが活きる配置が、組織の厚みになります。
中小企業は、人も時間も資金も限られています。全員を「何でもできる人材」に育てるより、一人ひとりの強さを活かし合える組織をつくる方が、現実的で持続的です。
適材適所とは、弱点を直すことではありません。強みが最も活きる場所に、人を置くことです。そのためには、どこで勝つのか。何で勝つのか。そのために、どんな仕事が必要なのか。
これを明確にし、仕事の役割と分担を定義する。そして文字通り、その仕事に最も適した人を配置する。人に仕事を合わせるのではありません。戦略から仕事を決め、仕事に人を合わせることが最も重要です。
この設計を担うのは、他でもない社長です。この視点を持てるかどうかが、これからの組織づくりの質を大きく左右していくのではないでしょうか。