戦略日記

志を明確にする #276

志を明確にする #276

会員制の経営実践ジムでは、毎回「経営八策」を読み合わせています。坂本龍馬の船中八策にならい、経営の本質を八つの言葉で整理したものです。その第一に掲げているのが、「経営に志を持て、志は全ての難関を突破する。」です。

先日の勉強会の場で、参加している経営者に一つの質問をしました。「あなたの志は何ですか?」多くの方の答えはこうでした。「うちは〇〇の事業をしています」「地域密着で〇〇を提供しています」「〇〇のサービスでお客様に貢献しています」どれも立派な取り組みです。しかし、よく聞いてみると、それは志ではなく事業説明になっていました。これは実は、経営者の世界でとてもよく起きることです。

事業とは「何をしている会社か」という話です。一方、志とは「なぜそれをしているのか」という話です。つまり、何をしているのか(What)ではなく、なぜやるのか(Why)であり、ここに志があります。

例えば、工務店であれば「家を建てています」というのは事業です。しかし志は、「家族が安心して暮らせる地域を守りたい」「次の世代まで住み継がれる家を残したい」といったものになるでしょう。飲食店であれば「料理を提供しています」というのは事業です。しかし志は、「人が集まり、笑顔になる場所をつくりたい」「この町に誇れる店を残したい」というものかもしれません。

志は、その事業を通して何を実現したいのかという想いです。経営は日々、判断の連続です。価格、採用、投資、方向転換。数えきれない意思決定を迫られます。そのとき、最終的な判断の軸になるのが志です。

志が曖昧なままだと、経営はどうしても短期の損得に流されます。世の中の流れや周囲の声に振り回されてしまいます。しかし志が明確であれば、判断に一本の軸が通ります。困難があっても、進むべき方向を見失いません。

志があり、そこから目的が生まれ、目標が定まり、戦略が立ち、仕組みがつくられ、作戦と戦術が展開され、最後は戦闘で決着がつく。すべての出発点は志となります。経営とは、志を形にしていく営みとも言えます。

経営者にとって志とは、飾りの言葉ではなく、経営判断の原点となるものです。だからこそ、時々立ち止まって自分に問い直す必要があります。「自分は何のために、この事業をしているのか。」この問いに向き合い続けること。それこそが、経営者のあり方を磨くことなのだと思います。