戦略日記
本当の差別化とは何か #287
「差別化をしなければならない」経営の世界では、当たり前のように語られる言葉です。しかし、多くの中小企業は、この“差別化”を勘違いしています。
・もっと良い商品を作る
・もっと安くする
・もっとサービスを増やす
・もっと頑張る
こうして、競合との比較競争に入っていく。ですが、これらは本当に差別化なのでしょうか。むしろそれは、「同じ土俵での殴り合い」をしている状態です。つまり、“戦っている”のです。
本来、差別化とは、競合と真正面から戦うことではありません。差別化とは、「競合と戦わないこと」に尽きます。「戦わずして勝つ」まさに孫子の兵法の教えです。弱者である中小企業が、規模で自社より勝る企業と同じ市場、同じ客層、同じ商品カテゴリで戦えば消耗戦になります。
「資本力」「知名度」「人員数」「広告費」の量で劣る者が、真正面からぶつかれば勝てない。それは根性論ではなく、構造の問題です。だからこそ、中小企業に必要なのは、「強く戦うこと」ではなく、「戦わなくて済む場所を探すこと」なのです。そのために必要なのが、ポジショニングです。「地域を変える」「客層を変える」「商品カテゴリを変える」ということです。
例えば、「名古屋の工務店」では競争相手が多すぎる。しかし、「名古屋市北区の子育て世代向け住宅専門」になった瞬間、比較対象が激減します。あるいは、「安いクリーニング店」ではなく、「医療機関専門の白衣クリーニング」に変われば、競争軸そのものが変わります。
これが戦略なのです。戦術ではありません。チラシをどうするか。SNSをどうするか。営業トークをどうするか。これらは全て、“戦う場所”が決まった後の話です。しかし、多くの会社は、戦う場所が曖昧なまま、戦術ばかり強化しようとします。だから疲弊するのです。他に、独自性とは奇抜さではありません。変わったことをすることでもない。“自分たちだけの戦いやすい場所”を見つけることです。
つまり差別化とは、「違いを作ること」ではなく、「比較されないこと」なのです。戦略とは、戦い方ではない。「戦わなくて済む経営の構造をつくること」に尽きます。