戦略日記

低価格競争との決別 #156

低価格競争との決別 #156

いつの時代でも多くのお客は、「安くて良いもの」を選択しようとします。これは自然且つ当然な行動だと思います。この安さが商品の生産や販売に関係する誰かの我慢や犠牲の上に成立しているのであれば、値決め自体が到底、健全であるものとは思われません。そればかりか、長く顧客に支持され続けられるとは到底思えません。

競合他社との差別化で最もわかりやすいのは商品やサービスを低価格にすることです。中小零細企業経営者が真っ先に思いつくものと言っても過言ではありません。

低価格競争とは、企業が価格を下げて競争する戦略です。低価格競争は、短期的には売上や利益を増やすことにつながりますが、長期的には以下のデメリットがあります。

●価格競争に勝つために、コストを削減する必要があり、品質やサービスが低下する可能性がある
●価格競争に巻き込まれることで、業界全体の利益が低下する可能性がある
●差別化ができず、競争力が弱まる可能性がある

相反するものとしては非価格競争です。これは、価格の安さではなく、競合他社にはない価格以外の価値を売りにする競争力です。その企業でしか扱っていない価値ある商品やサービスです。更には顧客が絶賛支持するブランドなどがこれに当たります。

かつての赤字企業比率は、30%から50%程度の推移でしたが、近年では70%から80%前後まで増えています。これは、円安や円高、好不況を問わず、30年間以上続いてきた「低価格を売り物にして数を多く売ろう。」という市場拡大、売上拡大志向が当たり前といった中で学んできた経営学や経営理論の負の遺産ともいえるものです。

昨今はインフレ経済にシフトされ、市場が求める価値は大きく変化しました。この局面に及んで、まだ低価格を売り物にする経営を続けたならば、社員や取引先を疲弊させ、モチベーションは下がり一層苦しめることは必定となります。社員は離職し、取引先も離脱していきます。結果、企業の業績は一層の低下を招いてしまうことは明白です。

企業の存続すら危ぶまれてしまい、「関係する人々を幸せにする。」という企業本来の真の使命と責任を果たすことは不可能となっていきます。

貴重な時間を競合他社との相見積もりや競争見積もりに常時費やされ、毎度毎度、いつ受注できるかどうかわからないような不安定、不確実な経営から今や脱却するべきなのです。

「誰にでも多くのお客に売れれば良い。」ではなく、「どうしてもあなたの会社の商品、サービスこそが欲しい。」というように特定のお客から絶大で圧倒的な支持をいただける戦略をつくりあげることが急務です。