戦略日記
資格も試験もない社長の重責 #241

医者になるには国家試験があります。パイロットになるにも、長期間の訓練と試験が必須です。どちらも人の命を預かる職業だからです。それにふさわしい知識と技能を、体系的に学ぶ“場”が整っており、それを証明する“資格”があります。
ところが、「経営者」になるには、何の資格も試験も必要ありません。今日、思い立てば明日には法人を設立でき、「社長」の肩書きを名乗れます。誰も「あなたにその資格はあるのか?」とは問いません。国家試験も訓練も、そして何より“学びの場”すらほとんど存在していないのが現実です。
本来、経営者こそ、もっとも準備が必要な立場です。なぜなら、経営とは「仕事をつくる」ことではなく、「人の人生を預かる」ことだからです。自分自身はもちろん、社員、その家族、取引先、地域社会に至るまで多くの人生に影響を与える存在であり、それが社長という役割です。
それにもかかわらず、経営者が“経営を学ぶ”場は圧倒的に不足しています。例えば「理念をつくる勉強会」「ビジネスマナー研修」は多く見かけます。しかし「戦略とは何か」「どう競争を避け、勝ち筋をつくるか」といった、本質的な“戦略思考”を学べる場は、ほとんど見当たりません。
つまり、資格もなければ、体系的に学ぶ場所もない。そんな状況で、多くの経営者が“勘”と“根性”と“思いつき”で経営の舵を握っているのが実態です。
「社員のために」「お客様のために」「地域のために」と、その人間性は立派でも、戦い方を知らなければ、いずれ疲弊し共倒れになります。人間性だけでは会社は守れません。そこに科学的・論理的な“戦略”という土台が必要なのです。
経営における戦略とは、「やりたいこと」や「得意なこと」「好きなこと」ではなく、「生き残るための選択」です。限られた資源で、最大の成果を出すための“設計図”です。これを知らずに事業を始めてしまえば、やがて市場に飲み込まれていくのは時間の問題となるのは明らかです。
戦略を知らずに始めてしまったことは、責められることではありません。責められるとしたら、それを「学ばないまま続けてしまうこと」です。戦略を学ぶことは、会社を守り、社員の人生を守ることです。
試験がない。学ぶ場もない。だからこそ、今、あなたの意思で“学びの場”に足を運び、“戦略”を手に入れて頂きたいと願っています。それが、未来を変える一歩になります。