戦略日記
社長は決断から逃げてはいけない #262
物事は、やるかやらないかのどちらかしかありません。決断の本質は、文字通り決めて断つことであり、物事を「決める」ことと、それ以外の選択肢を「断つ(捨てる)」ことの両方です。
経営とは、突き詰めれば「決断業」と言えます。どの地域で戦うのか、誰に集中するのか、どの商品に資源を投じるのか。ランチェスター戦略が示す三大戦略も、最終的には社長の“選択”がすべての起点になります。しかし現実には、この選択から逃げ続けている社長が驚くほど多いのです。
私はこれまで多くの中小企業を見てきましたが、会社の未来を決めるのは結局“決断できる社長”と“決断を避ける社長”の差でしかありません。
決断できない社長の特徴は、曖昧な言葉がやたらと多いことです。「もう少し様子を見てから…」「今はタイミングじゃない…」「検討しておきます…」などなど。そして時に、耳を疑うような発言が出てきます。「一度、顧問税理士に聞いてみないとわからない」これは社長自身が意思決定の責任を無意識に放棄した状態です。
相談すること自体は悪いことではありませんが、「判断の主体を自分以外に逃がしている」という点に問題があります。経営は“最終意思決定をする責任”が社長にあります。顧問税理士や奥さんが決めるのではない。社員が決めるのでもない。銀行が決めるのでもない。社長が決めるのです。ここを曖昧にしている限り、戦略は成立しません。
決断とは、精神論で踏ん張る話ではなく、やることを選び、やらないことを捨てる行為です。つまり、優先順位付けです。ランチェスター戦略における「選択と集中」は、まさに決断そのものです。
さらに怖いのは、決断しないこと自体が、最大のリスクであるという事実です。「行動しなければ失敗しない」これは大きな錯覚です。市場は常に動き、競合も動き、顧客の関心も移り変わっていく。社長が決断を先延ばしにしている間に、市場環境の方が先に変わってしまうのです。現状維持を選んでいるつもりが、実は音を立てずに静かに後退しているという現実に多くの社長は気づいていません。
経営に“検討中”という第三の選択肢は存在しません。「やるか、やらないか。決めるか、逃げるか」すべては社長の決断で決まります。未来を切り拓くのは、決断できる社長だけです。未来を奪われるのは、決断しない社長です。今日の決断が、1年後、3年後、5年後の会社の姿を決めます。