戦略日記
生産性向上は教育ではなく戦略で決まる #299
「社員の生産性をもっと上げたい。」そう考えたとき、多くの経営者が真っ先に取り組むのが教育です。研修を受けさせ、資格を取らせ、マナーを教え、スキルアップを図る。もちろん教育は大切です。しかし、私は多くの中小企業を支援してきて、一つ確信していることがあります。
「生産性は、教育よりも戦略によって決まる」教育は、社員一人ひとりの能力を高めます。しかし、戦略は会社全体の利益を生み出す仕組みを変えます。この違いは非常に大きいのです。
例えば、同じ営業担当者が一日に5件訪問するとします。価格競争の激しい市場で営業をすれば、どれだけ営業技術を磨いても値引き交渉に巻き込まれます。訪問件数を増やしても利益は思うように残りません。一方で、競争相手が少なく、自社の強みが評価される市場に営業をすればどうでしょう。同じ5件でも成約率は上がり、利益も高まります。
営業担当者の能力は変わっていません。変わったのは、「どこで、誰に、何を売るか」という戦略です。つまり、生産性を決めているのは社員の能力ではなく、経営者の戦略なのです。
これは製造業でも同じです。どれだけ現場改善を進めても、利益の少ない仕事ばかり受注していては忙しいだけです。残業は増え、社員は疲弊し、利益は残りません。飲食店でも同じです。接客研修を繰り返しても、価格競争に巻き込まれていれば、客数を増やすために低価格を続けることになるでしょう。工務店でも同じです。施工技術を磨くだけでは利益は増えません。どの地域で、どの客層に、どの商品を提供するか。この選択が利益を左右します。
教育が活きるのは、正しい戦略の上に立ったときです。中小企業は、限られた経営資源を一点に集中し、勝ちやすい市場を選ばなければなりません。その戦略があるからこそ、社員の努力が利益に変わります。
逆に、戦略を間違えたまま教育だけを続ければ、社員は優秀になっても会社は儲からないという矛盾が起こります。私はこれまで、多くの会社で「教育を強化したのに利益が増えない」という悩みを聞いてきました。原因は教育ではありません。戦略なのです。
経営者が考えるべきことは、「社員をもっと頑張らせる方法」ではありません。「社員が頑張れば頑張るほど利益が残る戦略」をつくることです。そのためには、市場を選び、顧客を選び、商品を磨き、価格を見直し、競争を避けることです。これが経営者の仕事です。
教育は戦略を実行する力を高めます。しかし、戦略そのものをつくることはできません。だからこそ、生産性向上を本気で目指すなら、最初に見直すべきは教育ではなく戦略です。
社員の能力を疑う前に、自社の戦略を見直す。その視点を持つことが、生産性を大きく変える第一歩になるのではないでしょうか。