戦略日記

引き算経営の時代

引き算経営の時代

商品の増加、機能の増加、情報の増加、社会の複雑化などなど。現代は放っておけば、何もかもあらゆるものが増えていってしまう。いわば足し算のような社会である。

「大きいことはいいことだ。」
1964年10月に初めて開催された東京オリンピックは、昭和40年代の日本の高度経済成長を世界中に知らしめるには、絶好の幕開けとなる出来事だった。国民所得の急激な上昇による国民生活の変化は、西洋菓子市場では華やかなチョコレート合戦となって現れ、大手メーカーがヒット商品を競った。

数や量を争う社会は終焉し、商品・機能・情報の「引き算」が価値となる時代に変わったのだ。

事実、無印商品は特定の客層に、そのシンプルさを訴求して支持が拡大した。余分な機能は不要という支持客層の答えだ。にも関わらず、以前、多くの企業は足し算を続けている。

「念のため、この商品も取り扱おう。」
「とりあえず、この機能もつけておこう。」
「一応、これも売っておこう。」など、商品やサービスを増やせば、リスクが分散するという勘違いをしている経営者が後を絶たない。

足し算は、自信の無さの表れといえる。自信のない経営者は足し算を好み、増やせば、誰かがひっかるだろう。「多ければ安心」という発想だ。

足し算をするとポジティブに感じて、人は何となく安心する。しかし、これでは経営は上手くいかない。「念のため」「とりあえず」「一応」は、足し算を促進してしまう危険ワードだ。

とりあえず増やしたところで、それに専門特化、集中している企業には太刀打ちできない。

「たくさんあれば、リスクは分散するだろう。」このように言う経営者がたくさん存在する。いや逆である。

足し算をして分散をするのはリスクではなく、「経営資源」である。ただでさえ経営資源が少ない中小企業の貴重な資源が分散し、全てが中途半端となり、逆にリスクが高まってしまうのが関の山だ。

時代は変わった。

経済が完全に成熟した今、「消費者は、機能が多い商品やサービスを好む」という考えは幻想だ。引き算の発想は、決してネガティブではないということを戦略構築を通して深く理解する必要がある。

前向きな「やめましょう!」を言える組織風土がなければ、いつまでも足し算経営から脱却することが出来なくなって経営は疲弊していく。