戦略日記

生ランチェスターは怪我のもと #258

生ランチェスターは怪我のもと #258

戦略が明確に構築されていないのに、DMやチラシを打ち、反応が無いからといって「ランチェスター戦略はダメだ」と言い出す経営者がいます。これは、使う側の経営者が「戦略の順序」を理解していないことに尽きます。

戦略とは、本来「どの地域で・誰に・何を・どう勝つか(1位になるか)」を定めること。つまり、地域・客層・商品の三大戦略を絞り込み、どこに資源を集中させるかを決めることです。

この“狙い”を定めずに広告を打つのは、的のない状態で弾を撃ち続けるようなものです。いくら弾(チラシ)を撃っても、的が無いのだから当たるわけがありません。にもかかわらず、多くの経営者は「チラシが悪い」「デザインが悪い」「キャッチコピーが弱い」といった表面的な理由に逃げ込みます。根本の問題は、戦略がないまま戦術を振り回していることに気づいていないことです。

間違ったDMやチラシをいくら打ったとしても、効果が出るわけがありません。そのDMが誰に向けられているのか、どんな問題を解決するのか、地域特性や競合構造に合っているのか。これらの検討を抜きに「反応がない」と嘆いても、結果は当然となります。

そして厄介なのは、この失敗を反省せず、次の“戦術系コンサルタント”に乗り換えていく経営者が少なくないことです。「別のチラシを作れば売れる」「SNS広告をやれば反応が変わる」等など、そんな幻想を追いかけている限り経営の本質にはたどり着けません。この繰り返しこそが、典型的な悪循環と言えます。

そして、このような経営者に共通するのが「戦略を学んでも、継続せず、深掘りしない」という特徴です。知った気になり、学んだつもりで止まってしまう。戦略は一度学んで終わりではなく、実践と検証を重ね、現場で磨き続けてこそ成果に結びつきます。“学びの深さ”が“利益の深さ”に比例することを理解しなければなりません。

「生兵法は大けがのもと」。これは、不十分な知識や中途半端な技術を頼りにすると、かえって大きな失敗を招くという戒めです。少しばかりの知識や経験を過信して物事を進めると、思わぬ大失敗をしてしまう。まさに経営にも当てはまります。