戦略日記

分散の誘惑を断つ覚悟 #267

分散の誘惑を断つ覚悟 #267

新年あけましておめでとうございます。

2026年は60年に一度の丙午(ひのえうま)の年です。丙は「陽の火」、午は「走る」を意味し、強いエネルギーと加速を象徴します。一度火がつけば、一気に燃え広がる。その反面、向かう先を誤れば、すべてを焼き尽くす危うさも併せ持ちます。

勢いが出やすい年だからこそ、経営においては「どこに向かって走るのか」「何に火を集中させるのか」が、これまで以上に厳しく問われる一年になります。

経営理念やビジョン、経営指針を策定すること自体は、とても大事なことです。しかし問題は、作ることではありません。その中身です。それらは戦略に基づいているのか。カテゴリNo.1になれる設計になっているのか。この問いを通過していない理念やビジョンは、どれほど立派でも経営を強くしません。丙午の勢いに乗って動けば動くほど、間違った方向への全力疾走になってしまいます。

経営で最初に決めるべきことは、実はとてもシンプルです。どのカテゴリでNo.1になると覚悟を持つか。この覚悟が定まらない限り、理念もビジョンも経営指針も、現場では機能しません。「誰のために」「どこで」「何をもって」勝つのかが曖昧なままでは、行動は分散し、判断はぶれ続けます。

ランチェスター戦略が示す原理は、極めて明確です。「集中の効果、分散の危険」です。これ以外にありません。

経営資源の少ない中小企業にとって、分散は致命的です。人も、資金も、時間も、大企業のようには使えない。その現実を無視して、「幅広く対応する」「可能性を広げる」「チャンスは全部取りに行く」と考えた瞬間から、経営は弱くなります。

強みは薄まり、差別化は消え、最終的に残る武器は価格だけになります。そして価格競争に入った中小企業が、長く生き残れることはありません。分散は死となります。

だからこそ、理念・ビジョン・経営指針は、覚悟を映すものでなければなりません。何をやるか以上に、何をやらないか。どこに集中するのか。その選択が言動として明確になっているかどうかが、経営の質を決定づけます。

丙午の火は、集めてこそ力になります。覚悟を決め、集中し、カテゴリNo.1を取りに行く。2026年は、その経営姿勢の確立が必要となる一年です。