戦略日記

オールドスタイル営業の落とし穴 #278

オールドスタイル営業の落とし穴 #278

中小企業の営業の世界には、いわゆる「昭和型」と呼ばれるやり方があります。特に大手企業の下請けをしている会社に多く見られた営業の形です。それは、客先を接待することです。

飲みに連れていく。食事をご馳走する。ゴルフに誘う。こうして関係を深め、仕事を回してもらう。こうした営業は、かつては珍しいものではありませんでした。むしろ、多くの会社が当たり前のように行っていた方法でした。

当時は、接待の金額や回数で競合との差が出ると言われた時代でもあります。どれだけ飲ませたか。どれだけ食べさせたか。どれだけゴルフに連れて行ったか。極端に言えば、接待の量が営業力だと考えられていた時代です。

実は、私自身も若い頃、その世界の中にいました。客先の重要なキーマンにゴルフクラブをプレゼントしたこともあります。関係を作り、仕事をいただくために、そういうことを当たり前のようにやっていた時代でした。今振り返れば、少し恥ずかしい笑い話です。様々な形で客先をもてなすことが「営業力」だと思われていた時代だったのです。

若い世代の人がこの話を聞けば、きっと驚くのではないでしょうか。

しかし、このやり方には大きな弱点があります。それは、仕事を決めているのが「会社」ではなく「担当者」になってしまうことです。担当者が異動すれば、関係は一瞬で消えます。担当者が退職すれば、仕事も消えることがあります。

つまり、会社として選ばれているのではなく、担当者との人間関係で仕事が流れている状態です。これは非常に怖い構造です。なぜなら、その担当者一人に会社の売上が依存してしまうからです。さらに恐ろしいのは、営業担当者そのものに依存してしまうことです。担当営業が退職すれば、顧客ごと仕事が流れてしまう。そんな話は決して珍しいことではありません。

一見うまく回っているように見えても、実は極めて不安定な営業の形なのです。そして、このやり方は今の時代には通用しません。企業のコンプライアンスは厳しくなり、接待で仕事が決まるような時代ではなくなりました。接待の金額で競争する営業は、もはや健全な競争とは言えないでしょう。

だからこそ、今あらためて問われるのは「自社はなぜ選ばれているのか」という本質です。どこの市場で戦うのか。誰に対して価値を出すのか。なぜ我が社が選ばれるのか。この「選ばれる理由」を構造として作ることこそが戦略です。昭和の営業は、「人」で仕事を取っていました。しかし、それは担当者が変われば終わる不安定な関係です。

現在の営業は違います。会社として「選ばれる理由」で仕事を取る時代です。そしてもう一つ重要なのは、それを「仕組み」として再現できる状態にすることです。人に依存する営業から脱却し、選ばれる理由をつくり、それを仕組みとして回し続ける。それこそが、市場から求められる営業の本質なのだと思います。