戦略日記
他力依存からお客を自らつくる経営へ #311
中小企業の多くは、実は営業をしていません。こう言うと、「いや、うちだって営業はしている」と反論される経営者もいるかもしれません。しかし、よくよく話を聞いてみると、既存客からのリピートや紹介、元請企業からの発注に頼るばかりで、自ら新しいお客をつくる活動をほとんどしていない会社が少なくありません。
長年、真面目に仕事をしてきた。良い商品をつくっている。お客からの評判も悪くない。だから、これからも仕事は来るだろう。そんな思い込みが、いつの間にか経営の前提になっているのです。
もちろん、紹介で仕事が来ることは素晴らしいことです。それだけ信用を積み重ねてきた証でもあります。しかし、紹介されることと、紹介を当てにすることは、まったく違います。
紹介は、いつ、誰から、何件来るのかわかりません。元請企業からの発注も、相手の事情によって変わります。つまり、自社の売上を他人の都合に委ねていることになります。
また、経営者の会や異業種交流会に熱心に参加している社長もいます。人脈を広げれば、いずれ仕事につながるだろうと、相当な時間と労力を費やしているのです。もちろん、人との出会いや学びには大きな価値があります。しかし、会に所属し、名刺を交換し、交流を深めることが、そのまま営業活動になるわけではありません。
仕事を紹介してもらうことを期待して参加しているのであれば、それもまた他力頼みの営業ではないでしょうか。人脈が広いことと、顧客をつくる力があることは、別問題なのです。
経営者にとって最も貴重な経営資源の一つは、自分自身の時間です。その時間をどこに、どれだけ投入するのか。経営者の会に費やす時間の何割を、本来のお客をつくる活動に振り向けているでしょうか。
一方で、広告を出さない。情報発信をしない。見込み客との接点をつくらない。自社の強みを伝える努力もしない。そして、仕事が減り始めると「景気が悪い」「最近はお客が動かない」「競争が厳しくなった」と嘆くのです。
そもそも、自社の存在を知らない人が、どうしてお客になってくれるのでしょう。どれほど優れた商品や技術を持っていても、知られていなければ選ばれることはありません。知られていない会社は、お客にとって存在していないのと同じなのです。
自社を知ってもらい、関心を持ってもらい、信頼してもらい、選んでもらう。その一連の仕組みをつくることが営業の本質です。それには、誰にでも売ろうとしない。どこへでも営業に行かない。何でも売ろうとしない。
地域を絞り、客層を絞り、重点商品を決める。そして、その市場で自社を選んでもらうために、限られた資金と時間を集中させる。広告も情報発信も、そのための手段です。良い仕事をすることと、新しいお客をつくることは、別の話です。
今の仕事は、過去に積み重ねてきた活動の結果です。そして、未来の仕事は、今の活動によって生まれます。仕事がなくなってから慌てて営業を始めても、すぐに成果が出るとは限りません。だからこそ、仕事があるうちに、次のお客をつくる原因を仕込んでおく必要があるのです。
紹介を待つ経営から、紹介が生まれる仕組みをつくる経営へ。他人任せのお客づくりから、自らの意思でお客をつくる経営へ。お客は、勝手にはやってきません。経営者の最も重要な仕事の一つは、今日の仕事をこなすことだけではなく、明日のお客をつくることなのだと思います。