戦略日記

最も賢い投資先 #310

最も賢い投資先 #310

経営者にとって「最も賢い投資先」は、自分自身だと思っています。なぜなら、経営者は自らの意思決定によって、会社の売上も利益も、そして将来までも変えることができる立場にいるからです。

どこで戦うのか。誰をお客にするのか。何を強みにするのか。限られた経営資源をどこに集中させるのか。こうした経営者の判断一つで、会社の業績は大きく変わります。もちろん、商いの源泉である粗利益を最大化するための商品開発や顧客づくりへの投資も欠かせません。しかし、その投資先や優先順位を決めるのも、結局は経営者自身です。

そう考えると、経営者の自己投資ほど、長期的に大きなリターンを期待できる投資はないのではないでしょうか。極端な話ですが、1万円の自己投資が、将来1億円の利益を生み出す可能性さえあります。たった一つの学びや気づきが、それまでの固定観念を覆し、経営判断を変える。その判断が会社の方向を変え、10年、20年にわたって利益を生み続けることもあるからです。

これほど大きな可能性を秘めた投資先は、世界中を探しても滅多にないと思います。ところが、現実にはどうでしょう。「利益が出たら勉強しよう」「時間に余裕ができたら学ぼう」「もう少し経営が安定したら投資しよう」そう考える経営者は少なくありません。

しかし、私はこの順番が逆だと思うのです。投資とは、未来の成果を得るために先行して行うものです。利益が出たからお金を使うのではなく、利益を生み出すために先にお金と時間を使う。これが投資の本質です。

そもそも、今の経営状態は、過去の意思決定の積み重ねによって生まれた結果です。ならば、将来の経営状態を変えたいのであれば、まず変えなければならないのは、経営者自身の考え方と意思決定ではないでしょうか。

かくいう私自身も、改めて一年間の研究塾に通い始めました。企業の存在価値や存在意義、経営理念、中小企業経営者の意識革新などについて学び、他の経営者と深い議論を重ねています。理念を理念だけで終わらせず、戦略を戦略だけで終わらせない経営です。

何のために経営するのかという「志」があり、その志を実現するための「戦略」があり、戦略を成果に変える「実行」がある。この三つが一気通貫してこそ、経営は本来の力を発揮するのだと考えています。

ただし、ここで忘れてはならないことがあります。学ぶことと、自己投資は同じではないということです。どれほど高額な研修を受けても、何冊の本を読んでも、どれだけ立派な知識を身につけても、それだけでは投資の成果は生まれません。

学んだことを使い、考え方を改め、意思決定を変え、行動を変える。そして、その結果を検証し、さらに改善していく。経営者にとって本当に恐ろしいのは、知らないことではありません。学んでも、何も変わらないことです。

私自身、長い経営経験の中で、多くのことを学びながら、それを十分に実践できなかった苦い経験があります。知っていることと、できていることの間には、大きな隔たりがあるものです。

学んだ証とは、知識が増えたことではなく、自分自身が変わること。経営者自身が変われば、意思決定が変わる。意思決定が変われば、会社の未来が変わる。

結局、経営者にとって最も賢い投資とは、未来の経営を変えるために、今の自分を変えることなのだと思います。