戦略日記

危険な経営 #84

危険な経営 #84

引き算経営は強みを一段と増していくことになります。

事業など横に拡げていくのではなく、縦の成長を促進させていくことです。つまり、一つのことに集中して深堀りしていくことに尽きます。

小職の過去において、Aという商品サービスから「これはAに関係するから始めよう。」 「これもBに関連して、お客さんに必要とされるだろう。」など、あれこれと手を拡げていった苦い体験があります。

モノは安く、たくさん売ることが商い(経営)であると刷り込まれてきました。

事業領域を拡大する足し算企業が沈んでいく理由の一つに、足し算が進んでいってしまうと拡げた分だけ競合企業と被る領域が増えていくからです。

競争条件がますます厳しくなっていくということです。足し算企業は、厳しい競争市場へ自ら突入することになるのです。

競争が厳しくなるとコモディティ化により価格競争に巻き込まれやすくなります。

こうなると収益は減少していきます。足し算企業は儲かりにくいということです。

競合他社との競争は、熾烈を極め大切な社員は疲弊していきます。すなわち消耗戦を繰り返し、いつまで経っても業績は上がらずとなります。

さらに無闇に拡げていくと、市場占有率(シェア)の高い強者企業に模倣されてしまい、一時的に良かったとしても最終的にはシェアを奪われてしまいます。

一方、引き算経営においては、共存が可能となります。

それぞれの企業が戦略に基づき、一芸に秀でるように深さを追求すると、競合他社との重なりが生じにくくなります。どんどん掘り下げていくことで、社員は、知識や技術、サービスなどを専門的に深められプロフェッショナルになっていきます。

そして、深さが出てくると競合他社からも真似されにくくなります。

引き算経営は、それぞれが棲み分けにつながるため地域や社会に多様性をもたらすことが出来ます。

事業分野や顧客層を引き算して専門化している企業ほど競争が少なくなることは明白で、引き算で倒産した話は聞いたことがなくても、事業領域や取り扱い商品の拡大といった足し算で消えていった企業は思い浮かぶと思います。

経営は、様々なリスク要因に囲まれています。

「売上をどんどん上げて、社員も増やし事務所も大きくしていこう!」 これは、昭和から平成にかけて誰もがやってきたスタイルです。時代遅れと言っても過言ではないと思います。

拡げれば拡げるほど、競合との厳しい競争が待ち受けており、自社が思っているようにならず「危険な経営をすることになる」と肝に銘じていきたいものです。