戦略日記

事業ドメインで戦わずして勝つ #139

事業ドメインで戦わずして勝つ #139

孫子の兵法に「百戦百勝は善の善なるものにあらざるなり。戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり。」という言葉があります。戦に勝つよりも戦わずに勝つことの方が上策という意味です。

100回戦って、100回とも勝利すれば普通に考えれば良いと思うでしょうが孫子は、これを否定して「戦わずに勝つことを善の中の善。」だと説きました。何故なら自社に損害がないからです。戦って勝った場合、敵より損害は少ないでしょうが無傷とはなりません。大切な経営資源に少なからず棄損が生じます。

競合との値引き合戦をして勝ったとしても利益は出ないと考えればわかりやすいかと思います。

ランチェスター戦略では、常に競合はどうか。戦略立案は「競合から考えよ。」が定石となっています。競合のいない市場を見つけることになりますが、こん日のように市場が縮小、細分化している状況においては大変難しいと思います。

その為には、自社の事業ドメインを物理的定義から機能的定義に変えて、自社は何業なのかという認識を変えてみることです。

ほとんどの企業は、自社の事業ドメインを物理的定義で考えています。例えば、チラシを提供しているのは印刷業であり、機械をつくっていれば機械製造業で、花を売っていれば花屋さんとなっています。扱っている物理的な「モノ」に着目しています。これだと同業他社が多く存在しているので、血みどろの戦いは必至となってしまいます。

これを機能的定義に変えてみることです。機能的定義とは、お客さんが価値として思っている「コト」に着目し、これを実現するための効用を事業ドメインとして設定することです。

例えば、花という物理的商材を提供していたとしても、花によってお客さんの暮らしにうるおいを与えている「うるおい提供業」と設定してみると、商材は花だけに拘らなくてもよいという事になります。ブランドメッセージは、「暮らしに、うるおいを。」となり、お客さんのライフスタイルを提案する店になっていくでしょう。

このような切り口で繰り返し、繰り返し考えていくことで独自の土俵をつくり、競合と戦わない一人横綱になることが重要です。自社の事業ドメイン(3大戦略)を今一度見直して、戦わずして勝つ独自領域をつくりだすことを中小企業だからこそ考えるべきです。何故なら事業領域の設定しだいで業績は決まってしまうからです。