戦略日記

人は簡単に覚えてくれない #162

人は簡単に覚えてくれない #162

元来、人は忘れる生き物です。資格取得の勉強で「いつまで経っても覚えられない。」「何度勉強しても記憶が定着しない。」等など、悩まれている方々は多いと思います。そもそも人間は、一度覚えたことをどんどん忘れていく生き物なので「忘れる事は当たり前」と考えた方が良いかも知れません。

エビングハウスの忘却曲線というものがあります。ドイツの心理学者であるヘルマン・エビングハウスが時間経過にともなう人間の記憶の変化やメカニズムについて研究された法則性が高い考え方です。

この研究では意味のないアルファベットを記憶させた後、どれだけ記憶を保持できているかを実験したもので、20分後には42%を忘れている(58%を記憶している)という結果が出ています。復習しなければ1カ月後にはほとんど忘れてしまう。二日後に復習すれば、100%近くの記憶に戻るとの内容です。

このように人が記憶することは曖昧になりやすく苦手であると言えます。経営で考えてみると、この人とは「お客」や「社員」などに置き換えられます。

ランチェスター戦略において、経営とは何かと問われれば「お客づくり」です。お客づくりを言い換えると「どうやって我が社を知ってもらえるか。」ということに尽きます。お客に知ってもらうためには広告活動が必須であり、ライバル会社との競争の中で自社をお客に、いかに知ってもらうかが重要となります。

中には、客層戦略の設定もなく、ただ闇雲に広告を発信している中小企業を見受けます。一番肝心な「誰に向けて」が欠如している広告です。これに加えて、気まぐれ的に単発で広告を発信している企業も多いと思います。

誰に向けてが無く、気まぐれ的単発な発信では、お客から見れば「どこの馬の骨かわからない会社が、何を買ってくれって言ってるの?」と簡単にスルーされてしまうことは必然となります。お客は、自社が思うほど気にも留めず、簡単には覚えてくれないからです。ましてや時間経過と共に、エビングハウスの忘却曲線の如く人は簡単に忘れてしまいます。

成果は、質×量で決まります。ランチェスター戦略の局面による第一法則と第二法則の違いはありますが、基本的には広告の発信する量が大事になります。この量は、継続していく量の多さです。気が向いた時に、急に広告を発信したとしても成果には繋がりにくいのです。決して、広告物の見栄えの善し悪しに依存するものでもありません。

社内の「人」でいえば、社員となります。例えば、社員教育においても同様です。戦略に導かれた教育プログラムを構築することは勿論のこと、これを実施する頻度や量、タイミングを考え、忘れないためのフォローアップも必要となります。

人は新しい情報を受け取った時に「記銘・保持・想起」の3ステップで記憶すると言われています。記銘は、情報を受け取ること。保持は、情報を保つこと。想起は、情報を呼び出すことです。

「お客や社員も簡単に忘れてしまうもの。」すなわち「お客や従業員へは簡単に伝わらない。」という前提定義をもつ必要があります。戦略経営者であるなら、お客や社員に伝わるように法則性を勘案し、成果に繋がるような戦略的な仕組みを構築していくことが求められます。

経営は、とかく曖昧なことが多いので、あらゆることに根拠をもって戦略レベルを高めましょう。