戦略日記

思いつきでは勝てない #234

思いつきでは勝てない #234

経営者同士が集まると、商品やサービスに関するアイディア出しが活発に行われます。「これ、ウケるんじゃないか?」「他社がやってないから面白いかも」といった会話は、一見活気があり、前向きなように見えます。しかし、こうした発想がそのまま事業の柱になることは、まずありません。その多くは“戦略”ではなく、単なる“思いつき”に過ぎないからです。

もちろん、アイディアの種は大切です。しかし、それだけでは市場で勝つことはできません。なぜなら、戦いのフィールドである市場には、すでに競合がいて自社の資源や強みにも限界があるからです。盛り上がった話の中のアイディアと勝てることは違います。

勝てる戦略とは、「どこの」「誰に」「なぜ」「どのように」価値を届けるのかが明確であり、かつ市場から見て、自社の強みと競合との違いを構造的に設計されなければいけません。その上で、アイディアは戦略を実現する“手段”として存在するべきなのです。

ところが多くの経営者は、思いついたことをすぐに試し、その結果が良ければ続け、悪ければやめるという“行き当たりばったり”の経営をしてしまいがちです。これは、戦略がなく、行動に一貫性がないことであり社員は混乱し、結果として継続的な成果に結びつきません。

重要なのは、よくよく考え、深く分析することです。「このアイディアは、戦略に沿っているか?」「競合より優位な位置を築けるか?」「自社の強みと一致しているか?」など。

勝てる会社は、まず戦略を描きます。「どこで戦うか」「誰と戦うか」「どう勝つか」という構想を明確にした上で、それを実現するための手段としてアイディアを使います。つまり、アイディアは戦略の従属物であり、主役ではないのです。

経営に必要なのは、ひらめきではなく、構想です。そして、構想とは「勝ち方」を描くこと。その視点を持たない限り、どれだけ面白いアイディアを出しても、経営は運任せになってしまいます。