戦略日記

選択と集中で勝ち筋をつくる #237

選択と集中で勝ち筋をつくる #237

中小企業経営において、最もやってはいけないことは「なんでもやる会社」になることです。最初のきっかけは、お客の要望に応えようと始めた小さなサービスの追加です。しかし気づけば、商品やサービスは増え続け、営業エリアは広がり、ターゲットも曖昧になっている。これは多くの会社で見られる現象です。

一番大きな問題は、手を広げれば広げるほど、競合が増えるということです。自社が得意としていた領域からズレれば、そこにはすでに競合他社が五万といます。価格競争、品質比較、スピード勝負……体力勝負の世界に巻き込まれ、疲弊するのは目に見えています。特に資源の限られた中小企業にとって、これは致命的となります。

広げた結果、「どこでもそこそこ、でもどこにも勝てない」という状態に陥ります。それは、戦っているようで実は“逃げている”状態で、逃げ場のない消耗戦の始まりなのです。

何でも対応する姿勢は一見親切で柔軟に見えるかもしれないが、裏を返せば「自社の軸がない」と宣言しているようなものです。

だからこそ、経営とは「捨てることによって、本当に選ぶべきことが見えてくる」営みであると言えます。「やらないことを決めてはじめて、自社が本当にやるべきこと」つまり、利益が出せること、継続性があること、強みを活かせることが浮かび上がります。言い換えれば、捨てることは“集中の起点”となるのです。

一点集中の戦略をとることで、ようやく資源が一点に集まり、力となります。たとえば、地域を限定すれば密着型の営業が可能になり、ブランド認知が高まりやすくなります。商品を絞れば専門性が高まり、価格決定力も持てます。顧客を選べば、価値観の合う人と長期的な関係が築けます。これは単なる効率化ではなく、“勝てる場所で確実に勝つ”という戦略的な選択です。

ランチェスター戦略が教える「弱者の戦略」はまさにこの一点集中です。強者の真似をして全方位に戦うのではなく、自社が勝てる小さなエリアでNo.1になること。これが唯一の勝ち筋です。小さなNo.1が積み重なっていくことで、やがて市場全体への影響力を持つ強い会社へと成長できるのです。

「何をやるか」より、「何をやめるか」を明確にすること。この“引き算の経営”こそが、中小企業にとって最も強い戦略であり、持続的成長の土台となります。