戦略日記
プロの経営者 #242

経営は感覚や経験に頼るものだと思われがちです。確かに直感や現場感覚は大切です。しかし、それだけでは不安定で再現性に欠けます。経験が違えば判断も違い、成功も偶然に左右されるからです。
プロの経営者とは何か。それは、業種や環境が変わっても「再現性のある成果」をつくれる人のことです。実際、上場企業の社長人事を見れば明らかです。ドリンクメーカーの役員が化粧品メーカーに、IT企業の役員が食品業界など異業種へのトップ就任は珍しくありません。そして多くの場合、着任後まもなくして業績を立て直したりします。
彼らは商品や業界のプロではなく「経営の構造」を熟知したプロだからです。経営には普遍的な原則があります。「誰に」「何を」「どうやって」届けるのか。そして、限られた経営資源を、どこに集中させるのか。
この構造の理解は、戦略的に再現できる力があります。それが“プロの経営者”に共通する本質です。たとえば、料理人の世界で「一流のプロ」と言えば、何度でも同じ味を出せる人でり、偶然や感覚に頼らず、素材・分量・温度・手順といった“型”を持っているからこそです。
ランチェスター戦略は、単なる経営ノウハウではありません。物理の法則に基づく“数理モデル”です。限られた戦力で勝つために、どこで戦うか、どこに集中するかです。これを愚直に実践することで業種を問わず全てに作用する法則です。
経営も同じです。感覚や勢いで一時的にうまくいっても、それは本当の実力ではありません。経営という現場は日々変化していますので偶然ではなく「構造として勝てる経営」をつくれる力が必要となります。
よって、中小企業こそ、この理論を学ぶべきです。なぜなら、大企業と違って、経営資源の何もかもが足りないからです。広告費、営業力、ブランド力など、あらゆる面で劣る中小企業が、真正面から戦って勝てるはずがありません。だからこそ、「どこで勝てるか」を戦略で見極め、そこに一点集中する必要があります。商品を絞る。地域を絞る。客層を絞る。この「捨てる勇気」がなければ、戦いはすべて消耗戦になります。
消耗戦とは、戦略を持たない経営者が、知らぬ間に無意識に踏み込む“経営の沼”です。相手が強いから負けるのではなく、戦い方を誤るから負けるのです。「中小企業だから…」という言い訳を使わず、再現性が高い経営戦略を構築して、成果を出し続けるプロの経営者になっていきましょう。