戦略日記

経営の目標設定で業績が決まる #248

経営の目標設定で業績が決まる #248

ある中小企業の社長に「何を売っているのですか?」と聞くと「まあ、建築リフォーム全般だな」と返ってきました。続けて「主な販売先の地域は?」と尋ねると、「愛知県全域と、時々岐阜県や三重県も。お客さんに喜んでもらえればどこでも行くよ。」と答えます。従業員5人の会社です。これが儲かっていない建築業の実態であり、方向性が定まっていない中小企業の典型例です。

「売上になるのならどこへでも」「幅広い層のお客さまに」「良い商品を」といった抽象的な言葉に終始しています。これは、経営戦略が部分的な対応にとどまり、経営の根本である事業ドメインが構築されていない証拠です。

経営の成果を高めるためには、地域戦略・客層戦略・商品戦略を明確に定義し、さらに競合との比較を通して自社の優位性を位置づけることが不可欠です。地域を定めなければ広告や営業活動は的を外し、客層を絞らなければメッセージは誰にも届かず、商品が特定顧客に刺さらなければ価格競争に巻き込まれるだけです。部分最適の積み重ねでは業績は一向に改善しません。

顧客の頭の中には「カテゴリと連想の法則」があります。ハンバーガーといえばマクドナルド、コーヒーといえばスターバックス、家電量販店といえばヨドバシカメラ。強い企業は必ず「○○といえば△△」というポジションを握っています。中小企業であっても同じです。「○○町のリフォームといえば△△工務店」と自然に想起されるカテゴリNo.1を築く必要があります。

ではどうすればよいのか。第一歩は競合比較です。地域・客層・商品ごとに競合を並べ、自社の強みと弱みを整理するのです。その上で、すべてを相手にするのではなく、まずは一点突破できるポジションを設定する。ある一つのカテゴリーで「この分野なら当社」と言われる状況をつくることが、No.1戦略の核心です。そして最後に、それを顧客に覚えてもらえる「言葉」にすること。戦略とは、顧客の頭の中に自社の存在を位置づける営みなのです。

中小企業が成長する道は広くありません。しかし「どこで・誰に・何を」で明確にNo.1を狙うことができれば、道は必ず開けます。この3大戦略の設定こそが事業領域であり、経営の目標となります。経営者が曖昧さを排し、具体的に戦略を描くことこそ、業績向上の唯一の近道なのです。