戦略日記

経営者の敵は思考停止である #294

経営者の敵は思考停止である #294

ある斜陽市場と言われている業種の経営者が、こんなことを言いました。「着物が売れないのに、下駄が売れるわけがない」確かに、その言葉には一理あります。しかし、この言葉の本当の怖さは、市場の話ではありません。思考停止してしまうことです。

「どうせ売れない」「業界が悪いから仕方がない」「人口が減っているから無理だ」こうした言葉が口をついて出るようになった瞬間、人は考えることをやめてしまいます。経営者が思考を止めれば、会社もそこで止まります。

市場が縮小していることと、自社が勝てないことは別問題です。市場が小さくなれば競合も減ります。顧客のニーズも変化します。そこで誰よりも顧客を理解し、新しい価値を提案できれば、生き残るどころか一人勝ちできる可能性すらあります。

実際に、人口減少の中でも成長している会社はあります。成熟市場でも利益を伸ばしている会社はあります。彼らは市場が良かったから成功したのではありません。環境を言い訳にせず、「どうすれば勝てるか」を考え続けたからです。

戦略とは、条件の良い場所を探すことだけではありません。厳しい条件の中でも勝ち筋を見つけ出す思考そのものです。だから私は、経営者が最も警戒すべき敵は、競合でも不況でもないと思っています。それは、自分自身の思考停止です。

「売れない理由」を並べ始めると、人は安心します。しかし、その安心は会社を少しずつ衰退へ導きます。経営者の仕事は、できない理由を語ることではありません。「どうすればできるか」を問い続けることです。

経営とは、変化対応業です。環境に文句を言う会社ではなく、環境に適応した会社だけが生き残ります。これは、生物の進化と同じです。生き残るのは、最も強い者ではありません。最も賢い者でもありません。変化に適応した者です。

市場は変えられません。人口も変えられません。物価も変えられません。しかし、戦う市場は変えられます。客層は変えられます。商品は変えられます。価値の伝え方も変えられます。そして何より、自分の考え方は変えられます。

戦略とは、「環境が良くなるのを待つこと」ではありません。どんな環境でも勝ち筋を見つけ出す思考です。思考を止めた瞬間、戦略は生まれません。問い続ける限り、可能性は消えません。だからこそ、どんな環境であっても考え続ける。それが、経営者に最も求められる資質ではないでしょうか。