戦略日記
強い会社は社長の意思から始まる #295
強い会社をつくる社長と、いつまでも迷い続ける社長。その違いは、能力ではありません。「成功している会社はどうしていますか。」「他社の成功事例を教えてください。」「おすすめのやり方はありますか。」経営相談を受けていると、このような質問をいただくことが少なくありません。
もちろん、成功事例を学ぶことは悪いことではありません。先人の経験から学ぶことは多く、自社に活かせるヒントもある。しかし、そればかりを追い求める経営者は、なかなか強い会社をつくることができないのです。なぜなら、経営とは正解探しではないからです。
一方、地域や業界で一位を築いている社長には共通点があります。「私はこうしたい。」「この地域で一番になる。」「この客層に集中する。」「この商品で勝負する。」と自社が進む方向を、自分の言葉ではっきりと語るのです。
もちろん、最初からその判断が正しいとは限らない。しかし、自ら意思を示し、その意思に基づいて経営資源を集中させるからこそ、会社は強くなっていきます。社長の仕事は、みんなの意見を聞き続けることではなく、最後は、「こうする」と決断することです。
だから戦略とは「選択と集中」なのです。同じことを学んでも、その後の経営には大きな差が生まれます。戦略を「売上を上げるための一つの手法」と捉えるのか、それとも「会社の未来を左右する経営の根幹」と捉えるのか。その受け止め方の違いです。
前者は、セミナーで学んだ内容を数あるノウハウの一つとして持ち帰る。そして、しばらくすると新しい情報や流行の手法へと関心が移っていきます。一方、後者は違います。戦略を経営の軸として据え、自社はどこで戦うのか、誰に価値を届けるのか、何で一位を目指すのかを徹底的に考え、その判断基準に沿って経営を組み立てていく。
だから、判断に一貫性が生まれるのです。反対に、意思が曖昧な経営者ほど、事例を探し続けます。「あの会社は何をやっているのか」「成功企業はどんな商品を売っているのか」「SNSはどう運用しているのか」「チラシはどう作っているのか」その結果、流行を追いかけ、手法を真似し、うまくいかなければ別の方法へ移る。その繰り返しです。しかし、他社で成功した方法が、自社でも成功する保証はどこにもありません。
地域が違う。客層が違う。商品が違う。競争相手が違う。そして何より、経営資源が違います。中小企業は限られた経営資源で戦わなければならない。だからこそ、「何をやるか」以上に、「何をやらないか」を決める必要があるのです。他社の正解は、自社の正解にはならないのです。
その基準になるのが、社長の意思です。ランチェスター戦略では、経営で最もウェイトが高い要因は、社長の意思決定や経営理念であり、その割合は53%とされています。どれほど優れた戦術を知っていても、社長の意思が曖昧であれば、社員は迷い、組織の力は分散します。
戦略とは、単なる経営ノウハウではなく、社長の「こうしたい」という意思を、会社全体の力に変えるための原理原則なのです。