戦略日記

勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし #25

勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし #25

プロ野球の故野村克也監督は、「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし。」と述べています。負けるときは負けるべくして負けているのです。

この言葉はもともと、江戸時代の大名で剣術の達人でもあった松浦静山の剣術書にある一文から引用されたものです。「負けるときには、何の理由もなく負けるわけではなく、その試合中に必ず何か負ける要素がある。一方、勝ったときでも、すべてが良いと思って慢心すべきではない。勝った場合でも何か負けにつながったかもしれない要素がある」という意味です。

試合に勝つためには、負ける要素が何だったかを抽出し、どうしたらその要素を消せるかを考えていく必要があります。もし勝ち試合であっても、この中には、負けにつながることを犯しているミスが多々あり、たとえ試合に勝ったからといって、その犯したことを見過ごしてはならないという戒めを述べているのです。これは経営でも全く同じではないでしょうか。

世の中には、「売上が10倍上がる」「利益が2倍向上する」「必ず成功する」等などの経営セミナーや研修が多くありますが、これらはノウハウ、ハウツー、テクニックのような類いで、いわば「戦術」となります。では、これらの通りに行って、本当に成功するでしょうか? 私は、そのように成功した経営者を見たことがありません。

成功には偶然の要素があり、、その要因は実は本人にもわからないことが多く、反面、失敗には再現性があります。やってはいけない事をやってしまうと必ず失敗するということです。だから実際には、むしろ失敗から多くのことが学べるものです。

戦略とは「戦いを略す」と書きます。戦わずして勝つ。いわば、やってはいけない事を知ることが何よりも先に必要となります。勝つ経営より、負けない経営をいかにつくるかという事になります。

「結果として」成功しているのは、負けない戦略、競合他社を凌駕(りょうが)する努力を怠らない企業です。
「絶対に勝てる戦略」すなわち「成功の十分条件」はありません。しかしながら「これをやったらほぼ確実に失敗する」すなわち「これをやってはいけない」という「DON’T」は存在します。言い換えると「踏んではいけない地雷」があるのです。そして、成功の十分条件は存在しませんが地雷を踏まないことが、少なくとも「成功の必要条件」となると考えることができます。

地雷の除去作業は、ひらめきや思いつきによる作業ではなく地道な作戦です。論理的、緻密に、地道に考えて調査や分析すれば、多くの地雷は発見し除去することができます。

負けない戦略は、才能やひらめきではなく、地道な努力で作ることができます。ひらめきに頼る戦略は、たまたまうまく当たったときは「カッコいい」のですが、そもそも属人的な部分に依存しているので、再現性や持続性に乏しいのです。ところが、なぜか多くの企業はこの地道な「地雷除去」を怠ってしまうのです。その理由として以下のような心理が働くことが推察されます。

地味で目立たない。つまらない。目先のことに忙殺されて、基本を忘れる。費用対効果がないと思っている。当たり前すぎておろそかにしてしまう。新しいことをやらないと仕事をやった気にならない。一見すると、ダメな部分のあら探しでネガティブに思える。こんなことを地道にやるよりも、勘や度胸で乗り切ったほうが速い(行動するの勘違い)

多くの競合企業が「地雷除去」を怠っているとすれば、その中で、あなたの会社がきっちり地雷除去を行うことには意味があります。なぜならば、競合他社が地雷を踏んで自滅するのを待っているだけで、生き残った自社が自然と勝者になります。すなわち「負けない戦略」が結果として「勝てる戦略」になるということなのです。

成功条件を追い求めることは不可能に近い。しかし、踏んではいけない地雷を知り、除去する。「失敗は成功の元」と言います。失敗の本質を学ぶことが結果、成功する近道ということになります。