戦略日記
非凡なリーダー #240

「ウチには優秀な人材がいないから仕方ない」「もっと使える人がいれば、会社も変わるのに」そんな声を、経営の現場ではよく耳にします。しかし、果たして本当にそうでしょうか?
冷静に考えてみれば、人はそもそも「能力に大差がない」ことに気づきます。もちろん、話すのが得意な人、手を動かすのが得意な人、物事の理解が早い人など、個性や得手不得手はあります。しかし、そうした違いがあったとしても、それは決定的な「能力差」ではありません。
圧倒的に成果を出す人と、そうでない人。その差の多くは、生まれつきの才能ではなく、「環境」と「仕組み」によって生まれているのです。ここで問われるのが、「戦略」という存在です。
戦略とは、限られた経営資源で最大の成果を生むための選択の設計図です。言い換えれば、「どこで・誰に・何を・どう戦うか」を決める、企業にとっての“勝ち方”の定義です。
リーダーが明確な戦略を持っていれば、会社の方向性はブレません。社員一人ひとりも、自分のやるべきことがはっきりします。そして、その戦略を具体的な業務の流れやマニュアル、ルール、評価制度といった「仕組み」に落とし込むことで、誰がやっても一定の成果が出るようにできます。
つまり、非凡なリーダーとは、特別な人材を“集める人”ではなく、平凡な人を“活かせる仕組み”をつくる人なのです。事実、成果を出し続けている企業の中には、突出したスーパースター社員がいないところも少なくありません。それでもチーム全体が機能し、結果を出し続けているのは、戦略が明快であり、その戦略が現場の仕組みとして根づいているからです。
逆に、どれだけ意欲的な人が集まっていても、戦略なき組織はブレ続けます。社員は何を優先すべきかわからず、毎日の仕事が場当たり的になります。そして、成果が出ないことを個人の能力のせいにしてしまうのです。
本来、経営とは「才能に頼らず成果を出すための設計」です。戦略がなければ、優秀な人も活かせません。戦略があれば、平凡な人でも戦える組織をつくることができます。
トップリーダーである経営者として問われているのは、「社員の能力」ではなく、その人たちで成果が出るような戦略と仕組みを、自分が描けているかどうかです。
非凡なリーダーとは、平凡な人たちに非凡な成果を出させる戦略家であり、その成果が再現され続けるような仕組みをつくる設計者なのです。