戦略日記

戦略なき経営談義は不毛である #243

戦略なき経営談義は不毛である #243

異業種交流会、あるいは経営者団体の会合など経営者同士が集まって意見を交わす場は数多くあります。その場で悩みを打ち明けたり、体験談を語り合ったりすることは、とても価値があることのように思えます。

実際、孤独な立場で経営を担う者にとって、共感し合える相手と話ができるというだけでも、心の支えになるものです。「自分だけじゃなかった」と感じられるだけで、少し肩の荷が下りることもあるでしょう。

確かに、孤独な立場で経営を担う者同士が励まし合うことには意味があります。しかし、そこに「戦略」という共通の土台がなければ、その議論はほとんどの場合、答えの出ない精神論か、属人的な経験談の応酬に終わってしまいます。

経営とは、再現性ある成果を求められる営みです。それにもかかわらず、「戦略」を学ばず、語らず、ただ「俺の時はこうだった」「うちはこうして乗り越えた」という体験話ばかりでは、聞いている側も自分の経営にどう活かせばいいか分かりません。根拠もフレームも曖昧なままでは、結局「ケースバイケースだよね」という言葉で議論は締めくくられ、何も残らないのです。

これはまさに、不毛と言えます。時間を使い、熱意を注ぎ合っても、答えも軸もなく、誰も前に進めない。経営者にとってもっとも貴重な資源である「時間」が、ただ流れていくだけです。

さらに言えば、戦略なき議論のもう一つの危険性は、“なんとなく満足してしまう”ことです。話してスッキリし、「良い会だった」「学びがあった気がする」と錯覚してしまう。けれど実際には、自社の経営に活かせる具体的な一手も、優先順位も決まらないまま終わってしまう。これでは、経営の質は決して上がりません。

経営の目的は自社がカテゴリ1位になり成果を出すことです。その成果を「戦略」という道筋で導けることこそ、プロの経営者としての条件です。もし、共通のフレームや概念があれば、たとえ業種が違っても、議論はより建設的で、実践的で学び多きものになるはずです。

だからこそ、まず学ぶべきは「戦略」です。戦略を知らずに経営を語ることは、目的地を決めずに動き続けている漂流者と言えます。感覚と経験だけに頼るのではなく、戦略という共通思考と共通言語で話し合える場こそが、意義深い経営談義を生むのです。