戦略日記
適正価格は客層が決める #298
「うちの商品はいくらが適正でしょうか。」経営相談の中で、よく受ける質問です。辞書によると、適正価格とは「不当に高くもなく安すぎもしない、原価や利潤、市場の価値を正しく計算して定めた妥当な値段」とあります。
もちろん、この考え方は間違いではありません。しかし、経営戦略の視点から見ると、もう一つ大切な要素があります。それは、「誰に売るのか」です。同じ商品でも、適正価格は一つではありません。
例えば、1杯1,000円のコーヒーを高いと感じる人もいれば、安いと感じる人もいます。高級ホテルのラウンジで、落ち着いた空間や上質な接客、ゆったりとした時間まで含めた価値であれば、その価格を納得して支払う人は少なくありません。
つまり、お客様が購入しているのは「商品」だけではなく、「価値」なのです。だからこそ、価格を考える前に決めるべきことがあります。それが客層戦略です。価格を重視するお客様を狙うのか。品質や専門性を重視するお客様を狙うのか。安心感やアフターサービスに価値を感じるお客様を狙うのか。
狙う客層が違えば、求められる価値も変わります。そして、その価値に応じて適正価格も変わるのです。ところが、多くの中小企業は、この順番が逆になっています。「競合がこの価格だから。」「昔からこの価格だから。」「値上げするとお客様が離れるから。」こうして価格を決めてしまいます。
ランチェスター戦略では、「地域・客層・商品」の三大戦略の設定によって業績に大きな影響を与えます。どこの市場で、誰に対して、どんな価値を提供するのか。この三つが決まって初めて、価格が意味を持ちます。
価格は、原価計算だけで決めるものではありません。また、競合に合わせるものでもありません。お客様が感じる価値と、自社が選んだ客層によって決まるものです。だから、適正価格とは会社が一方的に決めるものではなく、自社が選んだ客層との関係性の中で決まる価格なのです。
価格競争から抜け出したいのであれば、まず考えるべきは値段ではありません。「誰に選ばれたい会社なのか。」この問いに明確な答えを持つことです。客層が明確になれば、提供する価値が決まり、商品が磨かれ、最後に適正価格が見えてきます。
価格戦略とは、値付けの技術ではありません。客層戦略の結果なのです。