戦略日記

成功し続けることが難しい #233

成功し続けることが難しい #233

経営における成功の定義は、一概に定めることができません。売上の拡大、社員の幸福、社会への貢献、自身の自由や満足などなど。いずれも「成功」と言えるでしょう。しかし、中小企業の経営者にとっては、まず「生き残ること」そのものが、永遠に問われる成功の条件ではないでしょうか。

経営において、一度成功を収めること自体は、それほど難しいことではないかも知れません。資金、タイミング、環境、運──これらが偶然にも噛み合えば、一時的な成功をつかむことは十分に可能です。

努力が実を結ぶこともあれば、時流に乗って思わぬ成果が出ることもあるでしょう。そうした瞬間だけを見れば、経営は案外シンプルに映ることもあります。実際、創業間もない青年経営者が急成長を遂げる例も少なくありません。この時点で経営を語れば、すべてが順風満帆に思えるものです。

しかし、本当に問われるのはその先にあります。経営の本質は一時的な成果にあるのではなく、環境が変化し、競合が台頭し、顧客のニーズが移ろう中で、いかに自らを適応させ、持続的な成長を実現するかにあります。

昨日の成功体験が、今日の成果を保証してくれるとは限りません。むしろ、過去に固執すれば、変化への感度を鈍らせ、衰退の入口になりかねません。市場は絶えず動いています。新たな技術、消費者心理の変化、経済や社会構造の揺らぎなど、これらは容赦なく経営環境を揺さぶってきます。

一時の成功に甘んじた経営者は、変化に適応しきれず、やがて市場から姿を消していくことになります。かつて栄光を誇った企業が、現在は見る影もない。その事実が、何よりも如実に物語っています。

成功とは、ひとつの成果を固定化することではありません。たとえば、「社員の役割を見直す、販路を再構築する、定期的に戦略を見直す」こうした不断の試行と学習、そして小さな自己変革の積み重ねによって維持される、動的な状態なのです。

「成功し続ける」ことは、偶然ではなく、戦略に裏打ちされた再現性のある行動の連続です。経営とは、一度の勝利を目指すものではなく、継続的に成果を積み重ねていく過程の中で、真価が問われる営みなのです。