戦略日記
経営は変化対応業 #251

30年間続いたデフレは既に終わり、今や時代はインフレへと大きく舵を切りました。にもかかわらず、いまだに「低価格で数量を増やす」「売上を拡大することこそ善」というデフレ時代の成功体験に縛られた経営者が少なくありません。
先日、テレビニュースで飲食店の経営者がインタビューを受けていました。「お客様の喜ぶ顔が見たいので、企業努力で価格は維持します」と語っていましたが、資材やエネルギー、人件費が高騰する中で値上げを避ければ、利益は失われていきます。結果的にお客様を喜ばせるどころか、自らの店が立ち行かなくなってしまうのです。
このような経営者はしばしば「インフレは悪だ」とも評します。しかし、世界的に見れば、適度なインフレは経済成長の証し。むしろ問題は「インフレそのもの」ではなく、「デフレマインドから抜け出せない経営者の思考停止」にあります。
さらに、「いつまでインフレ、物価高騰は続くのでしょうか?」と尋ねる経営者も少なくありません。インフレや物価高騰の行方を正確に予測できる人など、誰一人いません。「資材や原料などの高騰で利益が出なくて困った」と言ってる場合ではなく、経営者に求められるのは、変化した市場を前提にどう戦略を組み立てるかです。
では、経営者が取り組むべき重要事項は何か。それは、価格転嫁を前提とした粗利益の最大化の経営戦略です。
粗利益は、経営のすべての費用を賄う源泉です。ここから家賃や光熱費はもちろん、社員の給与や賞与、教育費などなど全ての経費が支払われます。粗利益が減少すれば、社員の待遇改善も未来への投資も不可能になります。粗利益を確保・拡大できなければ、どれだけ売上を伸ばしても「数字だけの伸長」に過ぎず、会社は疲弊していきます。
「安さで勝負する時代」は終わりました。これからは「粗利益を守り抜くために価格転嫁を戦略的に実現すること」が、経営者の最大の責務です。時代が変わった以上、経営の常識も変えなければならないのです。