戦略日記
精神論だけでは勝てない #263
「精神論だけでは勝てない」これは、多くの中小企業経営者がうすうす感じていながら、直視できずにいる現実です。「気合い、根性、やる気、努力」こうした精神論は、確かに経営において必要です。しかし、精神論“だけ”を重視しても、会社の一人当たり粗利益は絶対に増えません。なぜなら、精神論では利益構造は変わらないからです。
実際、精神論を多用する会社ほど、一人当たりの粗利益額が低迷しています。「もっと気合いを入れろ」「もっと頑張れ」「気持ちを込めろ」こういう指示はすべて戦術レベルの話であり、本質的な経営改善ではありません。現場の“作業努力”を増やしているだけで、粗利益を増やす“経営努力”にはなっていないのです。
では、なぜ精神論ばかりになってしまうのか。答えはシンプルで、戦略の知識を知らないからです。
戦略とは「どの地域で・誰に・何を・どう勝つか」を決める“選択と集中の知恵”です。戦略が不明確な経営者ほど、どうしても精神論に逃げたくなります。気合いという言葉はその場をまとめる効果があり、即効性があるからです。
しかし戦略が欠けたまま気合いを入れても、それは方向音痴のままアクセルを踏む行為に近い。方向を間違えれば、頑張れば頑張るほど遠回りになります。これは多くの企業が陥る典型的な罠です。
精神論には二つの限界があります。一つは、精神論は“量”を要求するだけで“質”を変えないこと。長時間働けば売上は一時的に増えるかもしれませんが、利益構造は変わらず疲弊だけが残ります。
二つ目は、精神論は再現性が低いこと。気合いに頼る経営では、経営者の熱量に組織が依存してしまい、安定的に粗利益を高める仕組みにはなりません。だからこそ、経営者は精神論よりも戦略論を先に学ばなければならないのです。
戦略が明確になれば、やることはむしろ減ります。地域を絞り、客層を絞り、商品を絞り、資源を集中することで、一人当たりの粗利益は必ず上がります。
もちろん、精神論そのものを否定しているわけではありません。精神論は、戦略という“正しい土台の上”でのみ威力を発揮します。戦略が定まり、勝つ方向が見えたときに、精神論は組織の推進力となり、一気に成果を加速させます。精神論と戦略は対立するのではなく、順序があるのです。
結局のところ、経営とは気合いではなく戦略の設計です。精神論偏重の経営から脱却し、戦略に基づく“勝てる経営”へと舵を切ることです。