戦略日記
戦略が先で組織は後である #265
中小企業の社長は、よく「組織が弱い」「組織を強くしたい」「組織づくりが課題だ」と口にします。しかし、その言葉を聞くたびに私は違和感を覚えます。確かに課題としては理解できますが、明確な戦略がないまま組織の話をしても意味がないからです。
そもそも、組織づくりが目的ではありません。ランチェスター戦略で言う経営の目的は何か。それは1位づくりです。売上規模でも、社員数でもありません。地域、客層、商品、そのどこかで確実に1位を取ること。これが中小企業が生き残り、利益を出し続けるための唯一の道です。2位や3位では意味がありません。資源が限られている中小企業にとって、1位以外はすべて敗者となってしまうからです。
では、この経営の目的を達成するための経営の目標は何か。それが戦略づくりです。どこで戦うのか。誰に集中するのか。何で勝つのか。これを言語化し、数値で示し、全社で共有できる形に落とし込むこと。これこそが社長の仕事であり、経営の目標そのものです。
しかしながら、多くの社長は、この最も重要となる経営の工程を飛ばします。「とにかく人を増やそう」「組織体制を整えよう」「評価制度を作ろう」など、戦略がないまま組織づくりに偏重してしまいます。
現場では、よくこんな光景を目にします。売上が落ちたから営業部を強化する。忙しいから人を増やす。社員が動かないから管理職を置く。一見するともっともらしく聞こえますが、これはすべて戦略不在の場当たり対応です。戦う場所も勝ち方も決まっていないのに、人や部署だけを増やせば、社内には方向の違う力が生まれ、組織はむしろ弱くなります。
戦略を飛ばして組織論だけを語る会社では、必ず歪みが生まれます。社員は何を優先すべきか分からず、評価基準も曖昧になり、部署ごとに言うことが食い違う。結果として、指示待ちや責任回避、内向き思考が蔓延します。これは社員の問題ではありません。社長が戦略を決めていないことが原因です。
ランチェスター戦略での順番は明確です。「戦略が先、組織は後」地域戦略が決まれば、どのエリアを担当するのかが決まる。客層戦略が定まれば、誰に向けた仕事なのかが明確になる。商品戦略が固まれば、どこを磨く人材が必要かが見えてくる。この積み重ねの先にしか、意味のある組織は存在しません。
中小企業に必要なのは、立派な組織図でも、大企業の真似をした制度でもありません。必要なのは、勝つための戦略に直結した、最小であっても最強の組織です。戦略が明確になれば、不要な部署、無駄な会議、曖昧な役割は自然と消えていきます。
組織を語る前に、社長がやるべき仕事はただ一つ、戦略を決めることです。なぜなら、組織は戦略ではなく、戦術だからです。組織とは、決めた戦略を実行するための手段にすぎません。戦略なき組織づくりは、設計図のない建築と同じです。どれだけ人を集めても、強い会社にはなりません。